精神上の障害(認知症・知的障がい・精神障がいなど)により、判断能力が十分でない方 【以下、「本人」といいます。】が、そのことが原因となって不利益を受けないよう、本人の権利を守る援助者 【以下、「成年後見人」等といいます。】 を選び、本人を法律的に支援する制度です。
後見 | 保佐 | 補助 | ||
対象者の判断能力 | 全くない | 著しく不十分 | 不十分 | |
申立て人 | 本人・配偶者・四親等内の親族・検察官・市町村長など | |||
後見人 保佐人 補助人 の権限 |
必ず与えられる権限 | ・財産管理についての全般的な代理権・取消権 (※ただし、日常生活に関する行為を除く) |
・特定の事項についての同意権 (※ 同) |
― |
申立てにより与えられる権限 | ― | ・上記特定事項以外の事項についての同意権、取消権 ・特定の法律行為についての 代理権 |
・特定の事項の一部についての同意権 (※ 同) ・特定の法律行為についての 代理権 |
◆任意後見制度について◆
将来、自分の判断能力が不十分になった時に、生活や療養看護・財産管理等に関する事項について、誰に、どのように代理権を与えるかを、あらかじめ(まだ契約を締結できる判断能力がある間に)契約によって決めておく制度です。
契約は、公正証書によって結びます。また、どこまで委任するかなどの契約内容は、話し合いで自由に決めることができます。
(但し、一身専属的な権利についてはできません。また、与えられるのは代理権であり、同意権や取消権は与えられません。)
~手続きについて~
以下、簡単な手続きの流れをご紹介いたします。
① 専門家や家族と、「任意後見契約」を結ぶ
公証人役場で、公正証書を作成
法務局に、その旨を登記する
認知症等の症状が見られるようになったら・・・
② 家庭裁判所に申し立て※
ここで、裁判所により選任された「任意後見監督人」が、
後見人の仕事をチェックします。
③ 任意後見人が、「任意後見契約」で定められた仕事を行います。
~費用について~
任意後見契約をむすぶためには、次のような費用がかかります。
(ア)公正証書作成の基本手数料 | 11,000円 |
(イ)登記嘱託手数料 | 1,400円 |
(ウ)登記所に納付する印紙代 | 4,000円 |
(エ)その他 本人に交付する正本等の証書代 ・ 登記嘱託書郵送代 等 |
~「任意後見契約」と併せて契約等をすることができるもの~
・ 「見守り支援契約」 ・ 「財産管理契約」
・ 「遺言書作成支援契約」 ・ 「死後事務委任契約」 などがあります。
◆成年後見人について◆
~成年後見の役割~
本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人に代わって財産を管理したり、必要な契約を結んだりすることによって本人を保護、支援します。
*1 本人の財産管理や契約などの法律行為に関するものに限られているため、一般的に食事の世話や介護などは、成年後見人の仕事ではありません。
*2 その事務について、家庭裁判所に報告するなどして、家庭裁判所の監督を受けます。
~成年後見人の義務~
~成年後見人が具体的に行うこと~
① 財産目録を作る | 本人の財産状況を明らかにするため (選任後、一か月以内に家庭裁判所に提出) |
② 今後の予定を立てる | 本人にふさわしい暮らし方,財産管理や入院などの 契約について、収支予定も含めて計画 |
★ 日常の生活で・・・・・・・・本人の財産を管理(預金通帳の管理、収支を記録)
★ 仕事の内容について・・・家庭裁判所に報告
~成年後見人の任期~
~成年後見人の辞任~
家庭裁判所の許可が必要です。ただし、正当な事由がある場合に限られます。
~任意後見制度のメリットとデメリットについて~
任意後見制度には、それぞれ長所と短所があります。
メリット [長所] | デメリット [短所] |
契約内容が登記されるので、任意後見人の地位が公的に証明される | ア)本人に判断能力の低下前に契約できるが、実際の管理はできない |
家庭裁判所により任意後見監督人が選出されるので、任意後見人の仕事をチェックできる | イ)法定後見制度のような取消権がない |
ウ)財産管理委任契約に比べ迅速性に欠ける | |
エ)死後の処理を委任できない |
デメリットに対する対処
ウ) ← 別に「財産管理委任契約」※を締結できます。
エ) ← 別に「死亡後の特約事務契約」を締結できます。
※「財産管理委任契約」とは・・・委任代理契約とも呼ばれ、自分の財産の管理や生活の事務について、代理権を与える人を選んで、具体的な管理内容を決めておく契約。
精神上の判断能力の減退がなくても利用できるため
財産管理契約に関しても、メリット・デメリットがあります。
メリット[長所] | デメリット[短所] |
判断能力の有無に関係なく利用できる | 法定後見制度のもつ取消権がない |
財産管理の時期や内容を自由に決められる | |
本人の判断能力が減退しても、引き続き管理ができる | |
特約で、死後事務に関する契約ができる |